ベトナム最後の王朝はグエン(阮)朝で、フエを帝都としました。最後の皇帝はバオダイ(保大)帝です。彼は1926年に即位し、ベトナムがフランスからの独立を達成する過渡期に重要な役割を果たしました。彼の統治は、ベトナムの君主制の終焉を象徴しています。
フエ王宮は、中国の紫禁城をモデルに、ベトナム独自の建築様式と風水の思想が融合しています。主要なデザイン特徴は、左右対称の配置、鮮やかな色彩の装飾、複雑な彫刻が施された木造建築です。午門(Ngo Mon Gate)や太和殿(Thai Hoa Palace)は、その壮麗さと歴史的価値を今に伝えています。
フランス植民地時代、フエには多くの西洋建築が建てられ、既存のベトナム建築と融合しました。特にフレンチコロニアル様式の建物が多く見られます。また、食文化にも影響を与え、バゲットやコーヒーが普及しました。教育制度にも変化が見られ、ベトナムの伝統文化と西洋文化が混じり合う独特の文化的景観を形成しました。
フエの王宮複合体は、ベトナム最後の王朝であるグエン朝の首都としての顕著な普遍的価値が認められ、1993年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。その理由は、東アジアの封建的首都の代表例であり、計画都市としての卓越した構造、そしてグエン朝の芸術と建築の集大成を示す歴史的建造物群が良好に保存されているためです。
グエン王朝では、初代皇帝ジャーロン(嘉隆)帝が王朝を統一しフエを都と定めました。ミンマン(明命)帝は中央集権化を進め、多くの儒教的建築物を建設しました。トゥドゥック(嗣徳)帝は詩人としても知られ、彼のお墓はベトナムで最も美しい帝廟の一つとされています。これらの皇帝はフエの歴史、文化、政治に深く貢献しました。
カイディン帝廟は、ベトナムの伝統的な要素とフランス様式が融合した独特の建築で知られています。外観はゴシック様式を思わせる石造りで重厚感があり、内部は色鮮やかなモザイク装飾が施されています。特に、陶磁器やガラスの破片を用いた緻密な壁画や装飾は、東洋の繊細な美意識と西洋の影響が調和した見どころです。
ティエンムー寺は、フエで最も古く、最も重要な仏教寺院の一つです。17世紀初頭にグエン(阮)氏によって創建され、その後の王朝時代には多くの修復と拡張が行われました。高さ21mの七重のフーエンパゴダは寺院の象徴であり、フエの精神的な中心地として、また平和と繁栄を願う人々の信仰の場として、深い歴史的・文化的な意味を持っています。
「フエ」という地名は、ベトナム語の「Huế(フエ)」に由来し、これは「平和」や「優雅」を意味する「hoa(和)」や「huệ(恵)」という言葉に由来すると言われています。また、かつて漢字では「順化」と表記され、これも「順調に教化が進む」といった意味合いを含んでいました。歴史的にグエン王朝の都として栄え、その名の通り文化的中心地としての役割を果たしてきました。